〜妊夫の独り言〜

あやんぱの「パパなのだぁ」
15. 遠い世界

僕には好きな<場所>がある。
ここでいう<場所>とは状況や雰囲気やある概念のことであって
瞬間的なものです。
季節ごとにそんな場所が突然やってきて僕はその匂いをすかさず嗅ぎしめる。どうしてそんな場所が突然やってくるのかわからないけど、それは「遠い世界」ということ、とだけ理解しています。
それは音も見えるものも遠くに感じる場所。
五感全部にフィルターを張ったようなぼんやりとした雰囲気の中、
第六感だけは妙に冴えている感じがして、僕は何となく<そちら側>の場所をもう少し見たいと思うのだけれど、いつもそれは秒針の音と
ともに閉じていく。

桜の散りゆく季節、花の舞う音が微かに響き、誰もいない大木は曲がりくねりながら天を望んでいる。
蜃気楼のようにさえ思える<花の街並み>は一瞬にして僕の視界を閉ざして、もう二度とその場所を見つけることができない。

虫達がさえずる季節、旧日本家屋の縁側で影の中から明るい外の景色を眺めている。
陽射しは暑そうだけど心地よい風が僕の額をすり抜けて、細めた視界に線香のようないぶかしい匂いがうっすらと入ってくる。
その場所は集合・散開を繰り返しながら煙のように滑らかに消える。

落ち葉を踏みしめる季節、閑散とした雑木林を歩いている。心の隙間に入り込んで来るようなツンとした寒さが足の指先に届き、思わず目をつむったその場所に、まったく<完全な静寂>が映し出される。
そこには何人たりとも存在することができない完全な静寂。

吐息が視界を白く濁らせる季節、夜の白く冷たい雪のベッドで大の字になって空からやってくる小さな結晶達を眺めている。いくばくかの時間が過ぎると体の各機能は僕の命令を無視するようになってくる。強制すればいつでも感触を取り戻すことは出来るけど今はその必要性を感じない。そんな状態の中、思い出したかのように小さくすぼめた口から息を吸い込むと、白い闇が僕の全部を包み込み、その場所は妙に静かで、そして満ちている。

…そんな僕の好きな場所は誰もいない。僕でさえその場所にはいない。ただ純粋な「視点」としての僕がモニターを通じて映し出されているのを見ているように感じるだけ。一瞬の出来事のはずなのにそれはとてもゆっくりと過ぎる。
でも、僕はその場所に孤独を感じることもなく、いつまでも待っていてくれるような安心感がある。

もしかしたらその場所は「死」かもしれない。

そしてそこは遠いように感じているけど、とても身近な世界なのかも知れない。もしそうだとしたら僕は今きっと幸せなんだろう。その場所を感じることで、こんなにも生きていることを知りえたのだから…。
僕はこの場所を感じながら歳を重ねて、子供達の成長を見ていくことができる。
僕にはいつでも<還る場所>があるから、安心して生きていける。

僕の実体は二進数に変換され、記録媒体に収まると、「僕の人生」というタイトルをマジックで書かれ、埃をかぶった記憶の棚にしまわれる。そして実体がなくなった僕はきっとその場所へ還るのだ。
遠くで生きている事と、近くで死んでいる事は同じことのように思える。
だからその場所は実体世界に最も遠くて最も近い。まるで自分の影を捕まえることができないかのように。

こんな内容を書くと変に思われるかもしれないけど、きっとそんな「遠い世界」を感じるのは僕だけじゃないと思う。きっとそこは「死の壁」なんだろう。
いつか訪れるその日に還れる場所がなかったら、きっと僕は恐いだろう。だって僕の存在が何にも無くなってしまうから。
僕には実体としての自分がいる、そして僕の家族がある。今僕のいる場所もいつでも帰れる。だから一生懸命生きていける…。

written by ayanpa
あやんぱの
「パパなのだぁ」
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妻の立場をまったく無視した独断と偏見のパパ初心者の夫からみた妊娠に関する心情を書いてみます。
女性からしてみたら不快に感じられる部分があるかもしれませんが、僕の正直な気持ちを書くことで自分のわがままとやり方の違いを考察しいきたいと思います。
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INDEX
歓喜と覚悟
一人の時間、家族の時間
一人の時間、家族の時間 その2
妻が妊娠中に夫は浮気をするか?
左脳と右脳 男と女
風のふくまま
オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ
児童虐待
教育と環境?
パパの心配
NEVER CHANGE
狐と狸の化かし「愛」?【1】
狐と狸の化かし「愛」?【2】
愛こそすべて
遠い世界
一日の始まり
男の子? 女の子?
上の子、下の子
ビューティフル・ネーム
夫から見た出産【1】
夫から見た出産【2】
夫から見た出産【3】
一人ぼっちの足跡















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