〜妊夫の独り言〜

あやんぱの「パパなのだぁ」
16. 一日の始まり

僕の一日は、世の中の事情なんて爪の垢ほどにも考えていないような気だるい電子音とともに始まる。
地球のどこからか飛んでくる電波をキャッチして寸分の狂いもない時を刻む、プラスチックと金属でできた無表情の時間システム。そんなに高性能なら年金問題や僕のレム睡眠のタイミングもキャッチしてくれよと懇願するのだが、彼にはそこまでの思慮深さはないようだ。

しかたなくまどろみながら目覚めると、夜眠る前には「川」の字になっていたはずのベッドの地図は、寝ている間に隕石でも落ちたのでは?と思うほど、ふとんと妻と娘は散開・集合し、「けものヘン」か「しんにょう」のような形態を成している。まるで太古の地殻変動のようだ。

いくつものトラップをくぐりベッドから抜け出すと、タバコをくわえて外に出る。タールとニコチンの塊は、朝の匂いと一緒に僕ののどをへばりつくように通過して体全体の感覚を麻痺させる。習慣とは恐いもので、タバコを止めるメリットは無数にあるのに、続ける理由は何一つない。止めようとする意志までがニコチンに麻痺させられているようだ。「禁煙」なら何百回でもしてきたのに、「禁不煙」はいかなる意志もいらない。
もはや生理現象化された生活システムなのだ。食欲とか性欲とかと同じ部類で「煙欲」だ。

でも「浮気」や「万引き」などの生活習慣システムから生じる一種の「病気」ほど歪んでいないと、自分を正当化し、過剰なエアコン依存と同じく地球温暖化の一因を作っている。

"健康"のために太陽に向かって背伸びをして麻痺した体全体に電気信号を送り、ラジオ体操もどきのことをしてみる。立位体前屈で手の平を地面につけ体の柔軟さを確認する。屈伸運動して怠惰の音を聞く。

システム化された習慣として新聞を取り出し、排出・洗浄作業をする。少しヒリヒリした頬をなでながら、エスプレッソ・マシンで淹れるカプチーノを観て、今日一日に良い事があるか占ってみる。豆がもうそろそろ古くなってきて香りも薄く抽出もあまい。ミルクもあわ立ちが荒く滑らかさがない…。どうやら今日は"際立ってない"か、望み"薄い"らしい。

妻が朝食の準備をしている間、娘に"娘用・朝のシステム"を施し一緒に教育番組を観る。ガチャピンとムックが懐かしいのだが、今は衛星かデジタル放送でしかやってないらしい。
今の教育番組は発展している。
さすがにガチャピンがスキューバやサーフィンをするようなことはしていないが、コニちゃんこと「小錦」が名文をラップで読みあげる。
「ケインコスギ」が日本作法を学ぶ。
いつも観られないが、9時を過ぎれば「UA」が森の熊さんを歌い、「いつもここから」がアルゴリズム体操する。
でも、娘のお気に入りは「いないいないばあっ!」の「ワンワン」だ。

歌に合わせて躍りだす娘を横目に新聞を開くと、そこには狂気の中にある平和な日本が書き記されている。
犯罪者も功労者も能面のような「顔のない顔」をしている。
1億円問題で偉い人達が責任をなすりつけあっている。
改造内閣は知らない人ばかりだ。これじゃ、郵政民営化も殺人事件も少子化問題も国連決議も平和を願う気持ちも同じ扱いのようだ。
そんなに憂鬱になるのに、僕は主要記事を無表情に読む。
不思議なものだ。子供の頃、番組欄しか調べなかった僕が、今では日本の動向を評論家にでもなったかのように朝から批判しているのだから。僕もまた他人事のように「顔のない顔」として一日と向き合っているのかもしれない。

テレビに飽きたのか、娘は僕のシステム作業を妨害し、そんな"半日遅れの出来事"の載った紙を踏みつけてぐしゃぐしゃにすると、特等席である僕のひざの上に座る。
彼女にとって「世の中のシステム」なんてその程度のものだし、人が生きるという条件だけを揃えるなら、衣食住と"特等席"さえあれば足りることを知っている。
一緒にご飯を食べて、一緒に遊んで、一緒に眠ることが、パルプとカーボンで出来た「憂鬱」を暴く方法だ。

僕は冷めたカプチーノを憂鬱と一緒に胃袋へ落とすと、口のまわりについたミルクの泡で娘の笑いをとる。
朝食と弁当を用意した妻は「腰が痛い」と寝転がり、朝一番の惨状と同じく娘と一緒に床の上で"地殻変動"を繰り広げる。
どうやら夜中の隕石は妻だったらしい。

独身時代には想像もしなかった生活が今ここにある。
結婚して家族を形成する必要性や意味は、きっとこういうところにあるのだろう。僕はだんだんと世界の憂鬱と偽善と矛盾をひっくるめて自分が好きになってきた。
システム化された社会はひどく単調でくだらないことも多いけど、変わって欲しくない毎日もある。
"システム"の毎日を同じように繰り返しているように感じながら、僕たちは繰り返すことのできない朝を迎えて一日が始まる…。

written by ayanpa

Post Script:
日日是好日 by 孔子(?)
「毎日が、えぶりでい!」 by あやんぱ

あやんぱの
「パパなのだぁ」
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妻の立場をまったく無視した独断と偏見のパパ初心者の夫からみた妊娠に関する心情を書いてみます。
女性からしてみたら不快に感じられる部分があるかもしれませんが、僕の正直な気持ちを書くことで自分のわがままとやり方の違いを考察しいきたいと思います。
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INDEX
歓喜と覚悟
一人の時間、家族の時間
一人の時間、家族の時間 その2
妻が妊娠中に夫は浮気をするか?
左脳と右脳 男と女
風のふくまま
オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ
児童虐待
教育と環境?
パパの心配
NEVER CHANGE
狐と狸の化かし「愛」?【1】
狐と狸の化かし「愛」?【2】
愛こそすべて
遠い世界
一日の始まり
男の子? 女の子?
上の子、下の子
ビューティフル・ネーム
夫から見た出産【1】
夫から見た出産【2】
夫から見た出産【3】
一人ぼっちの足跡








































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